※この記事では「自閉スペクトラム症」を「ASD」を表記します
【この記事ではこれらを学ぶことができます】
➀ASDの子が「覚えられるもの」と「覚えられないもの」の違い
➁ASD当事者が抱くリアルな感覚
➂ASD当事者が「覚えたくないのに覚えてしまうもの」
④保護者・支援者が「覚えられないんだ」と勘違いしやすい内容
➄保護者・支援者の方々に意識してほしいこと
ASDの子どもたちは、特定の物事に対して周囲が驚くくらいの記憶力を見せることがあります。
反対に、何度言っても、何度教えても覚えられないことが存在していたりもします。
共感できる保護者・支援者の方は少なくないでしょう。
このことに関して、ASD当事者の方々にお話を伺った所…
「興味の有無」が大きく関係している
ということが分かりました。
リアルなお言葉をこの記事では惜しみなく紹介します。
また、ASDの子どもたちは、覚えたくないのに覚えてしまうものによって苦しさを抱えていたり、保護者・支援者に「覚えられないんだ」と勘違いされているものがあったりします。
この記事では、ここから「ASD当事者の方が抱くリアルな感覚」を紹介し、「覚えたくないのに覚えてしまうもの」や「保護者・支援者が勘違いしやすいこと」についても分かりやすく解説をします。
保護者・支援者の方々に意識していただきたいことについても最後に記載しますので、ぜひご覧ください。
※この記事はここから約10分で読むことができます。
ASD当事者のリアルな感覚
ASDの子どもたちの記憶には「興味の有無」が大きく関わっている。
果たしてそれはどういうことなのか…。
ASD当事者の方から実際に頂いたリアルなお言葉を紹介します。
【20代男性 Aさん】
よく覚えられるのは、出来事やその出来事の年月、車の名前とその車の排気量と使用ガソリン、出かけた中で通ったことのある道、路線とかです。
ほぼ一発で(頭に)入ってきます。
意識していなくても入ってくる感じですね。
覚えられないのはPCのエクセル関係、パンを作るなどの製造関係や機械類の操作です。
細かすぎて覚えにくいです。
【40代女性 Bさん】
話を聞いていると右から左へ流れていく感覚があります。興味のないものは全く入りません。
しかし、面白いことに興味のあるものは全て音声記憶に切り替わります。
看護学校の頃は、ノートを一切取らず講義の内容を音声記憶のみで過ごしました。
教科書を見ると、その場の録音が流れる感覚があります。
【20代女性 Cさん】
記憶に残るものと頭からすぐに消えてしまうものがあります。学校の授業では、興味のあるジャンルだと頭の中に入ってきますが、興味の無いジャンルだと集中できませんでした。
興味のあるジャンルですぐに理解できないこともありましたし、一発で頭に入るかというと微妙です。
物事を記憶に定着させるには時間がかかるタイプで、何度も同じことを繰り返すことで覚える感じです。
【20代女性 Dさん】
自分の好きなアイドルの顔とか名前とかパソコンの使い方とか、自分の好きな物に関しては記憶力が良いです!
逆に算数・数学とか自分の嫌いなものだったり興味のないものは記憶力がないというかしないというか…。
算数は何度教えられても難しい感覚がありました。
4名の当事者の方から頂いたリアルなお言葉から、それぞれ個人差はあれど、【興味の有無】がASDの子の記憶に大きく影響していることが分かります。
興味の有無によってよく記憶できるか否かはASDの子に限った話ではないでしょう。
この記事を見てくださっている皆様には
ASDの子が持っているのは多くの人とかけ離れた感覚ではない
ということを押さえていただけると良いと思います。
ASDの子が覚えたくないのに覚えてしまうもの
ASDの子どもたちは「自身に降りかかった負の経験」を長きにわたって記憶してしまう傾向があります。
・自身の失敗やミス
・相手に言われた傷つく言葉
・他者からの注意や叱責
こういった負の経験が何カ月も、何年も頭に残り、「フラッシュバック」や「反芻思考」という形で現れ、度々苦しくなってしまうんです。
周囲から見て何もない状況で突然泣き始めたり、苦しみ始めたりするASDの子の様子を見たことがある方は少なくないと思いますが、その様子には「負の経験」が関係しているかもしれません。
このASD当事者の苦しさは必ず押さえておきましょう。
保護者・支援者が勘違いしやすいこと
ASDの子どもたちに対して
「何度言っても覚えてくれない」
「何度教えても覚えてくれない」
と感じることは少なくないんじゃないかと思います。
勉強、マナー、生活スキル等、様々あると思いますが、それは「覚えられない」のではなく「理解できていない」「理解できても上手く実行できない」のかもしれません!
ASDの子どもたちは特性上…
・抽象的な物事の理解が難しい
・空気や状況を上手く読み取ることが難しい
・他者の気持ちを察することが難しい
といった特徴が見られます。
そのため、保護者・支援者の話(説明)が、覚えられない以前に理解できないことが往々にしてあるんです。
言われたことが理解できていても上手く実行できないこともたくさんあります。
「覚えられない」という捉え方と「理解できていない」「上手く実行できていない」という捉え方は全く違います!
ぜひ、ASDの子の特性や普段見せる様子を踏まえ、「理解できていない」という可能性の元で考えを巡らせてみてください。
ヒントになる当法人のYoutube動画をこちらから確認することもできます。
おススメですので、ぜひご覧ください!
保護者・支援者が意識すべきこと
ここまでの内容を踏まえ、保護者・支援者がの方々には
➀特性を考慮した苦しさの理解と対策
➁興味のあるものからの学び
この2つを意識していただきたく思います。
特性を考慮した苦しさの理解と対策
保護者・支援者の方が感じる「覚えられない・覚えてくれない」という感覚の裏には「理解できない・理解できても上手く実行できない」というASDの子の苦しさが存在している可能性があります。
この苦しさをまずは理解して
・抽象的な物事の理解が難しい
➜具体的かつ簡潔な言葉で話をする
・空気や状況を上手く読み取ることが難しい
➜都度状況を伝えつつ、合理的な理解を目指す
・他者の気持ちを察することが難しい
➜決まりやルールを用いて合理的な理解を目指す
(※この解決策が全てではなく一例に過ぎないことをご理解ください)
といった対策を考えてみてください。
保護者・支援者などが連携し、共通の支援を行っていく事が最も効果的であると考えられます。
興味のあるものからの学び
ASD当事者の方のお言葉から「興味のあるものはよく覚えられる」という傾向が見えたと思います。
この事を踏まえ、特に学習においては「興味のあるものから学ぶこと」を意識していただきたく思います。
【興味のあるものからの学び】
(例1)電車が好きな子に、電車に乗ることや遠くへ行くことを目的としてお金の勉強を始めてみる
(例2)テレビが好きな子に「○時からテレビを見よう」などと時刻の捉え方と合わせて学習を深めてみる
筆者は、この方法を実際に放課後等デイサービスにて試した所、確かに効果を感じました!
【実践結果】
対象:トラックが好きで漢字は小学1年生レベルを覚えられない高校生
支援➀:車やトラックに関連する漢字から学習
➜1.2回の練習で「車」「走る」等の漢字を長期的に覚えるようになった
支援➁:他の漢字と紐づけた文で学習
➜「車が道を走る」「トラックを運転する」の文が書けるようになった
子どもの興味や課題によって様々な支援が考えらます。
目の前の子に合った支援を検討してみてください!
動画でもASDについて解説中!
ASD当事者の方々から頂いた声を元に、目の前の子どもたちを理解することができる動画を2週間に1本のペースで投稿しています!
動画は【限定動画】として扱っており、NPO法人Re-eachのHPからのみ観ることができます!
文字が少なく、スライド形式で、1本10分未満。
とても観やすいと思いますので、ぜひアクセスしてみてください!
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