【この記事ではこれらを学ぶことができます】
➀自閉スペクトラム症(ASD)の子が色々な物を口に入れてしまう理由
➁ASD当事者が抱くリアルな感覚
➂保護者・支援者の方々が行うべき支援
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちの中には、口に入れてはいけない「危険な物」や「不衛生な物」であっても口に入れてしまう子がいます。
注意をしても止めず、同じことを繰り返す様子もよく見られたりするため、困っている保護者・支援者の方々は多いと思います。
この「色々な物を口に入れてしまうこと」に関して、自閉スペクトラム症(ASD)の当事者の方々にお話を伺った所…
「安心」「興味」「こだわりのような感覚」
等、様々な理由があることが明らかになったんです!
また、重要なこととして
➀物の状態把握
➁危険予測
が上手くできない当事者の方が多くいることも明らかになりました。
この記事ではここから、「当事者の方が抱くリアルな感覚」を紹介した上で、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を踏まえて「物の状態把握・危険予測」が上手くできない理由についても解説をします。
保護者・支援者の方々に意識していただきたいことについても記載しますので、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事はここから約8分で読むことができます。
自閉スペクトラム症(ASD)の当事者の方のリアルな感覚
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちはどうして色々な物を口に入れてしまうのか…。
実際に色々な物を口に入れてしまっていたという自閉スペクトラム症(ASD)の当事者の方から頂いたリアルな感覚を紹介します。
【20代 女性 Aさん(興味)】
目に入ったものはとりあえず口に入れてしまう所がありました。
私の記憶の中で一番最後に口に物を入れたのは小2の時で、工作の材料で家から持参した飾りボタンを飲み込みかけました。
興味を持ったものはとりあえず口に入れてしまう…という感じで、理由はあまり深く考えていなかったです。
髪の毛は味がしないけどジャリジャリする、ティッシュは少し甘味を感じる…等の感覚は今でも覚えています。
よほど鋭利な物であれば別ですが、それ以外は1つひとつ危険性を説明されるまで理解できていませんでした。
【30代 男性 Bさん(興味)】
小学生の時にビー玉を口に入れたことがあります。
危ないものを口に入れるスリルを味わいたかったというのがありましたね。
詰まったらどうなるかを考えながらスリルを味わっていました。
詰まったことがないので、本当の意味で危険性は理解していませんでした。
スリルを求めることがくだらなく感じるようになった時に止めました。
【20代 男性 Cさん(興味・安心・こだわりのような感覚)】
小学校低学年まで、ビー玉やおもちゃ、ティッシュなどを口に入れていましたね。
ティッシュは甘い味がしたから入れていましたが、その他は遊びでした。
当時は危険性を考えてはいませんでした。
今もそうなんですが、何か口に入れてないと落ち着かないみたいな所はあります。
【重度ASD当事者・作家:東田直樹さん(安心・こだわりのような感覚)】
僕は手に持っているものなど、すぐに何でも口に入れてしまうので「汚いからやめなさい」と注意されます。
口に入れてしまうのは、汚い物ときれいな物の区別が、僕にとって分かりにくいことも理由の一つです。
目で見て汚れている物は、汚いとすぐに分かります。
でも、目で見て汚れていない物は基準がハッキリせず、言われてからも、とどまってしまいます。(略)
僕はタオルをかんだり、鉛筆をくわえたりして物を口に入れると、何だか安心するのです。
(東田直樹 自閉症の僕が跳びはねる理由 角川文庫)
4名の当事者のリアルなお言葉から【安心・興味・こだわりのような感覚】があることが理解できると思います。
そして、当事者の方々のお話しにはさらに、【➀物の状態把握】と【➁危険予測】の難しさに関するお言葉がいくつもありました。
この2つがどうして難しいのか。
以下では1つずつ分かりやすく解説をします。
➀「物の状態把握」が難しい理由
重度の自閉スペクトラム症(ASD)の当事者である東田直樹さんは…
口に入れてしまうのは、汚い物ときれいな物の区別が、僕にとって分かりにくいことも理由の一つです。
目で見て汚れていない物は基準がハッキリせず、言われてからも、とどまってしまいます。
と書籍に記しておられました。
自閉スペクトラム症の子が、汚い物ときれいな物の状態把握に困難さを抱くことには【目に見えないものを上手く理解できない】という特徴が影響している可能性があります!
自閉スペクトラム症の子どもたちには「その場の空気感や状況が理解できない」「人の気持ちを察することが難しい」「抽象的な概念(言葉)が理解できない」といった傾向が見られます。
そのため、空気の読めない発言をしてしまったり、ストレートな言葉で人を傷つけてしまったり、人との会話に付いていけなくなったりすることがあるんですね。
今挙げた「空気・状況」「気持ち」「抽象的な概念(言葉)」とはまさに【目に見えないもの】です!
今回のお話も、多くの方は「ばい菌がついている」「不衛生である」等と、目に見えない汚れを認識できるかもしれませんが、自閉スペクトラム症の当事者の方からするとそれが上手く理解できないからこそ口に入れてしまうのだと考えられます。
②「危険予測」が難しい理由
・よほど鋭利な物であれば別ですが、それ以外は1つひとつ危険性を説明されるまで理解できていませんでした。(20代 女性 Aさん)
・詰まったことがないので、本当の意味で危険性は理解していませんでした。(30代 男性 Bさん)
・当時は危険性を考えてはいませんでした。(20代 男性 Cさん)
自閉スペクトラム症の当事者の方々の言葉にはこのような内容がありました。
これには、【物事の予測が難しい】という自閉スペクトラム症の当事者の特徴が影響している可能性があるんですね。
2024年に発表されたマーモセットというサルの一種を用いた研究では以下の2つが明らかになっています!
➀自閉スペクトラム症の特性を持つマーモセット(サルの一種)は、繰り返される刺激に慣れる事が難しく、脳の中で行われる予測も不安定で精度が低い。
②自閉スペクトラム症の特性を持つマーモセットは、上手く予測ができない傾向にあったが、その際の脳の使われ方が個体によって大きく異なっていた。
この結果から、自閉スペクトラム症の子どもたちは個人差はあれど「物事の予測が上手くできない傾向にある」と分かります。
「これがのどに詰まったら本当にまずいな…」
「もしもの事があったら大変だな…」
などと上手く予測ができないからこそ、自閉スペクトラム症の子どもたちは色々な物を口に入れてしまう可能性があると考えられます。
保護者・支援者の方に意識してほしいこと
ここまでの内容を踏まえて、保護者・支援者の方々にはぜひ…
➀口に入れて危険な物は子どもの手の届かない所に置くこと
②簡潔な説明を行うこと
この2つを意識していただきたく思います。
子どもたちに「万が一の出来事」は絶対に避けなければなりません。
基本であるとは思いますが、口に入れて危険な物は子どもたちの手の届かない所に置きましょう。
その上で、色々な物を口に入れてしまうことが危険であることについて簡潔に説明を行いましょう!
この時、「菌がたくさん付いててね…」「危ないんだよ!」と言っても子どもたちは上手く想像し、理解することはできません。
だからこそ、「口に入れて病気になって学校に行けなくなるよ」「詰まって死んでしまうかもしれないよ」等と想像しやすく分かりやすい言葉で子どもたちに説明をするように心がけてください。
ここまでの内容、ぜひ参考にしてください!
動画でも自閉スペクトラム症について解説中!
自閉スペクトラム症(ASD)の当事者の方々から頂いた声を元に、目の前の子どもたちを理解することができる動画を2週間に1本のペースで投稿しています!
動画は【限定動画】として扱っており、NPO法人Re-eachのHPからのみ観ることができます!
文字が少なく、スライド形式で、1本10分未満。
とても観やすいと思いますので、ぜひアクセスしてみてください!
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